田邊 真三さん(田邊ファーム)

日本オーガニックカレッジ理事長。愛農高校へ進学後、 八ヶ岳中実践大学在学中に1年間スイスでの研修、山口県下関の研究農場での実践を経て独立し、現在は従業員を雇用した農業法人の経営をされています。

かたつむりの会(消費者と生産者のつながる会)や、NGO法人とともにスリランカでの堆肥づくりの指導、有機農業塾の開催、大手企業との連携や日本酒の商品開発など多岐にわたる活動をされ、さらに今回の日本オーガニックカレッジの設立にも取り組まれました。

今まで田邊ファームで研修を受けた人数は約40人。田邊さんの地元での有機農業者を増やしたいという思いから、多くの方の移住や就農の第一歩として貢献できればと、研修生を育ててこられました。

 基礎情報

・就農年数:24年
・農業従事者:4名(本人、従業員3名)
・耕地面積:田1ha、畑50a
・栽培品目:主に葉物・果菜類など約25品目

(米、トマト、なすび、ピーマン、きゅうり、ほうれんそう、コマツナ、水菜、ネギ、ズッキーニ、サニーレタス、ラディッシュ、カブ、大根、じゃがいも、人参、玉ねぎ、春菊、卵など)

・栽培品目の選定理由:ハウスを有効利用するため反収のいいもの
・販路:中小卸売70%・顧客(個人、レストラン、ホテル)30%、かたつむりの会(卵が主)

・虫対策:肥料を完全発酵させ害虫が棲みつかない堆肥づくりをする

・害獣対策:集落に囲いがある

・肥料:堆肥分析、土壌分析にこだわり自作


農業のイメージを払拭した新しいモデル

若い人が抱いてしまう農業のイメージである「3K(きつい、汚い、かっこ悪い)」を覆すことをテーマに、「技術で楽にするように、きれいに、かっこいい」という新しいモデルを目指されています。

ヨーロッパの農業は日本とは真逆で、兄弟が多いと選ばれた人しか継げなくなってしまうほど誇りのある職業と知り、後継者不足の日本でもその考えを定着させたいという思いを持たれました。

自然の摂理を利用した肥料のこだわり

虫が出たらその都度対処するのではなく、虫が棲みつかない堆肥づくりをされています。自然の摂理の先を読み取り、手間がかかってしまう工程を省くためにこの考えにたどり着いたそうです。

自然界にあたりまえにいる虫は、目につくレベルになると大量発生と言えます。自然の摂理を壊さないために自分の裏山は植林をせず雑木林を残されているそうです。現在は竹チップを用いた肥料の開発もされています。

国内外での新しい取り組みの数々

神石高原町にあるNPO法人ピースウィンズジャパンとともに発展途上国で内戦後の復興支援として有機農業の指導をされています。

 

今後の展望

今後も町内外で有機農業を広め、放牧の家畜ができる場を作ったり、有機野菜レストランをつくり海外の人を呼び込むなど新しい有機の里を構想されています。


田邊さんからのメッセージ

「新規就農にあたりたいへんなことが多いので、あまり一人で考えすぎず少しでも相談してもらい、一緒に有機農業を行っていきましょう。自然が相手なので、自然と長年向き合ってきた先人たちと話をしていろいろなことを吸収しながら新しい有機農業をしていってほしいと思います。」


伊勢村 文英さん(こだわり農場)

日本オーガニックカレッジ副理事長。ご家族で先人の知恵に習った農業をされ、全国に先駆け40年も前から有機農業に取り組まれています。生産者と消費者がともに分かち合って何が本物かを互いに見極めて食べる「顔の見える運動」をされてきました。田邊さんとともにかたつむりの会や福山市学校給食への野菜の納入、有機農業塾など、次世代に向け持続可能な農業の実現に向けて長年にわたりご尽力されています。現在は他にもアドバイザーとして、子育て支援事業の一環で「待ちの子育て」という有機農業に通ずる子どもの本来の力を引き出す大切さについても講演されています。

基礎情報

・就農年数:50年(1978年より有機農業に全面転換)

・農業従事者:3名(本人、息子、研修生)

・耕地面積:田1ha、畑3ha

・栽培品目:少量多品目

・販路:かたつむりの会30%・七福神30%・直売40%

・虫対策:とうがらし液(虫の食物連鎖を大事にする)

・害獣対策:網、とうがらし液、ワナで捕獲

・肥料:山林原野の活きた土を見習い、土着菌を使用しすべて自家生産。


40年の取り組み「農業は命の生かしあい」

・1泊の山の学校、日帰り農業体験、年に1~3名の研修生の受入を行ってきた経験をもとに、田邊さんと2012年神石高原町有機農業塾の設立、2017年日本オーガニックカレッジの設立に至った。

・全国で食育の講演会活動など、多面的な次世代の育成に尽力

・毎週土曜日に福山市商店街の直売所を開催。常連様が手土産を持ってきてくれるようなつながりのある場に。

・町の有機農業推進協議会の設立、広島県有機農業研究会、全国有機農業の集い2012での代表活動

・「道の駅」に併設された、神石高原町の農産物を食材とした料理を販売する「神石高原マルシェ」に中心メンバーとして参画

・有害鳥獣駆除員として息子さんとともに集落を守る

・牛、鶏を飼うことにより飼料自給100%

 

全国環境保全農業コンクール 平成24年優秀賞、平成26年度生産局長賞を受賞

人と環境にやさしい農業と暮らしのあり方の普及や、次世代の育成と定住につながる中山間地の農業の活性化を行ってきた活動が評価されました。

(詳しくはひろ有研のこちらのページへ)

伊勢村さんはここでこのようにお話されています。

「有機農業でたどり着いたスローガンは命の生かしあい。おかげさまで農場の経営も2代目に引き継ぐことができた。提携している消費者も2代目へ引き継がれ、次世代に続く有機農業のかたちが目に見えて来ている。持続可能な山が若返るように、若い世代が自立するまで、指導、支援をしていく。3代先の子どもたちが健康であるように、地球を、自然を守る活動を続けていきたいと思う」

自給自足の考えで生まれるこだわりの作物

自足自給の考えをもとに作物を育て、味噌・甘酒づくりなども行なわれ、ほとんどの食材を自家で作られています。

体にいい食料油を作れないかと勉強してきた結果「畑の青魚」と呼ばれるえごま油にいきついたそうです。生活習慣病の予防や健康に効果があり、お客さんから直筆のFAXが届いたり、モデル・女優も愛用し雑誌で紹介されました。

「MORE」2017年5月号より引用


伊勢村さんからのメッセージ

「1週間に1回、自分の農作物を販売し、自分の何が人気なのか、一番なのかリサーチし、それを経営の柱として営農設計して、楽しい楽な農業を引っ張っていってほしい。若い世代のエネルギーで、これからの農山村を支えていってほしいと思います。」

 

研修生の声 菅谷 秀さん

愛農高校の専攻課程で伊勢村さんのもとへ住み込みで2017年4月~2018年2月まで研修されていた菅谷くん(18)へお話をうかがいました。

Q神石高原町を選んだきっかけは?

「自足自給の生活がしたいと高校の先生に言ったところ、こだわり農場を紹介されました。」

Q住んでみて感じたメリット・デメリットは?

「メリットは、かたつむりの会や学校給食があるので生産者としてここだったら売るのには困らないだろうなと思いました。また、地域の人たちが優しいです。研修生としてデメリットはありません。ここに住んでいて僕にはメリットばかりでした。」

Q伊勢村さんはどんな人ですか?

「どんな質問にも僕のことを考えて誠心誠意答えをくれました。 僕だけでなく、だれに対してもそうですが、とても真摯に向き合ってくれます。1年間の実習はとても楽しく勉強になりました。」

 

研修後の卒業式は伊勢村さんも出席されていて、研修中も家族のように過ごされていました。

今後菅谷くんは「国内外を問わずいろいろなところで研修を積んでいき、神石はふるさととしてこれからもつながっていきたい」とおっしゃっていました。(聞き手 水元)

 



平元 行信さん(平元農場)

神石高原町油木でトマトを中心に有機農業をされている平元さん。土壌分析に詳しく、アミノ酸分析、有機農業のデータ化を行われています。有機農業者と医療分野をはじめ多業種のメンバーの交流を通じて有機農産物の本当の価値を医学・農学の両面から科学的に検証するオーガニック&メディカル七福神の理事長を務められています。

基礎情報

・就農年数:46年

・農業従事者:家族、現在は主に本人

・耕地面積:水稲34a、有機58.5a、特栽23a

・栽培品目:トマト、レタス、ジャガイモ、玉ねぎ、こんにゃく、水稲

・栽培品目の選定理由:土質が乾燥しやすいので乾燥を好む品目を中心に。また学校給食に配慮した品目。

・販路:七福神で共同販売

・虫対策:主に鷹の爪

・害獣対策:電気柵

・肥料:土壌分析データをもとに設計(堆肥、木灰、珪酸苦土等)


農地を荒廃させる化学肥料、気候に左右されず強い有機

水稲が40年ほど前よりも20㎝ほど背が低いのに倒れやすくなってしまったのは、化学肥料を使い続けたことによる害だそうです。化学肥料や農薬がいかに農地を荒廃させたかを知り、一人でも多くの人に有機農業に取り組んでもらいたいという思いを持たれています。

46年の経験を通じて、有機農業を長く続けている圃場ほど気候変動にも左右されず安定し、病気にも強いということを実証されています。

 

トマトの技術

神石高原町の特産品であるトマトの技術を長年培われています。

神石高原町の夏は朝晩の寒暖差が大きく、甘く実るトマトの生育に適しています。

異業種間の交流

有機農産物への認識・理解が浅く、単なる「こだわり農産物」というイメージしか持たれていない現代で、有機農産物の本当の価値を医学、農業の両面から科学的に検証するため、多業種のメンバーとともの次世代を担う人材の就農支援、農産物の販路拡大、自然環境を配慮した農業の推進を行われています。


平元さんからのメッセージ

「神石高原町は圃場面積は小さく大規模経営には向きません。その代わり、有機農業にとっては資材も豊富にあり、技術を伝えるノウハウがあります。この町でやるなら有機農業をおすすめします。」